俳優・菊池修司さんが役者人生10周年の節目に挑むのは、末原拓馬さんが脚本・演出を手がける一人芝居『神育 ーかむはぐー』。
3人の登場人物をひとりで演じ分けながら、人間とは何か、そして人は何によって育てられるのかを描きます。
2万文字を超えるセリフと向き合いながら、一人芝居への挑戦への意欲や、俳優として歩んだ10年間で得たもの、そして今だからこそ向き合える「人間らしさ」についておうかがいしました。

――最初に脚本を読んだとき、どんなところに惹かれましたか?

主に3人の登場人物が出てくるのですが、思ったよりも3人一緒にいるシーンが多く、セリフが交錯しているので会話劇としての面白さを感じました。その分、演じるのは大変だなと思いましたね(笑)。
一人芝居なので、今誰がしゃべっているのかを演じ分けて、お客さんに対しても分かりやすくしないといけないですし、とても演じがいのある演目だなと。

お話自体もすごく面白かったですし、こういう世界観がすごく好きなんです。普段出演している2.5次元作品には、あまりない作風なので、ストレートの素敵なところがふんだんに盛り込まれているなと思いました。自分にぴったりな脚本をいただけたなと思っています。今から演じるのがとても楽しみです。

――脚本・演出の末原拓馬さんとのエピソードがあれば教えてください。

拓馬さんはいい意味で独特な方なので最初会ったときは緊張していました。でも以前、僕が当時所属していた劇団番町ボーイズの公演で拓馬さんに脚本・演出をしていただいた時に、すごく役者に寄り添いながら新しいアイデアを提供してくださる演出家さんだなと感じたんです。

今回も、拓馬さんから知恵や知識をお借りしつつ、自分の力を存分に出せば、新しい化学反応が起きるんじゃないかと思っているので、こうしてタッグを組めることがすごく嬉しいですし、楽しみですね。

――一人芝居について、楽しみな部分や、逆に不安や怖い部分があれば教えてください。

不安なところは、まさにこの2万文字以上あるこのセリフをどう覚えていこうかなというところですね(笑)!でも、いつもの稽古ならば6時間のうち、自分のシーンは1〜2時間だったりするけれど、今回はありがたいことに自分ひとりなので、全ての稽古時間を自分に費やせるという意味ではいいのかもしれません。
楽しみな部分は、自分ひとりだけでお客さんをちゃんと引っ張れるのか、飽きさせないような芝居をどこまでロジック的に埋め込められるのかということ。

ブルステで共演している横井翔二郎さんに、一人芝居で何を大切にすべきかアドバイスをいただいたんです。「キュッとリアルな表現をすることによってお客さんは世界観にのめり込める」「そんな芝居を心がけることで、一人芝居に飽きさせることなく、最後まで作品を見てもらうことができる」と教えてもらいました。


横井さんはブルステで絵心甚八を演じられているのですが、とにかくお客さんを惹きつける求心力が必要なキャラで、セリフ量もすごいんです。そんな先輩にもらった言葉を意識しながら、今まで培った経験や知識を生かして、お客さんに最後まで楽しんでもらえるような芝居をしたいと思っています。

――『神育』は少年が人間を知らない状態から、いろんなものを知っていく物語です。菊池さん自身がこの10年間で「人から教えてもらったもの」の中で、一番心に残っているものは?

10代の頃に、父親から挨拶だけはしっかりしろと言われていました。現場に入るときはおはようございます、終わったときはありがとうございますとお疲れ様でした、何かしてもらったらありがとうを言う……何事も挨拶から始まりますし、そんな些細なところから人との関係は構成されると思っているので、挨拶は自分の中で大事にしていることです。

やっぱり父親の存在は大きいです。母親もそうですが、身近で1番自分のことを知って見ている存在ですし、僕は反抗期が本当になかったので、何を言われても常に体に染み渡る感じで聞いていました。
その言葉たちが今、自分を構成していると言っても過言ではないので、感謝しています。

両親は僕の出演作をよく見てくれていて、すごく褒めてくれます。でも、人としてだらしない格好で生活するなとか、しっかりしろとか、細々したところから人間性は出るからちゃんとしなさい、みたいなことは今でもよく言われるんです(笑)。
確かにな、と納得することばかりなので、反発せずに受け入れてますね。仲のいい家族だと自分でも思っています。

――『神育』では「神を育てるのは人間か、人間を育てるのは神か」という問いがあります。菊池さん自身は「人間を人間らしくするもの」は何だと思いますか?

人と人が関わっていくことで、自然と人間味は出てくると思っています。いろんな人と接していくなかで、いろんな感情を見つけられれば人間味が出てくると思うので、表現をたくさんすることが大切かな。表現すればするほど自分自身も豊かになるし、その周りもきっと豊かになります。
内に気持ちを隠して押し殺したり、誰とも接しないよりも、誰かと交流をしていろんな感情を得て、アウトプットをすることで、人間らしくなるのかなと。得たものをアウトプットすることは、自分でも大事にしていることですね。

――この作品では「赦す」というキーワードがあります。菊池さん自身は、昔の自分のことで「今だったらもう少し自分を許してあげられるな」と思えることはありますか?

10代の頃はすごく飽き性だったんです。何をしてもすぐに飽きてしまって、続かなくて。だからこそ、今役者を10年続けられていることは、自分では結構すごいことなんです。高校時代に少しだけブレイクダンスをやってたんですけど、ブレイクダンスも割とすぐに飽きて辞めてしまいました。

でも、ダンスをやり続けていたら、今の人生の武器になったはずだった。あの時もうちょっと続けていれば、何か変わったのかなと思うこともあります。なので、今までは飽き性だった10代の自分のことを許せませんでした。

でも今では、過去の自分のそんな部分も今の自分を作り上げたものだし、そうでなかったら今の自分はなかったかもしれないと思うようになりました。広い目で見たときに、飽き性だった自分のおかげで今があるから、過去の自分を許してあげられるかなと。
ダンスに関しては、もう少しやっておけばよかったなとちょっとだけ思いますが(笑)。すごく得意だとはいえないけど、踊ることは楽しくて好きなので、その気持ちは昔から変わっていないです。

――菊池さんが感じる一人芝居 『神育 ーかむはぐー』の魅力を教えてください。

登場人物は3人だけですが、物語が進むにつれて、それぞれの関係性が何度も大きく変化していきます。その3人を僕ひとりで演じ分けなければならないので、そこが一番の見どころです。物語もどんどん面白い展開になっていきますし、芝居と脚本が合わさることで、さらに魅力的な作品になるんじゃないかなと思っています。

僕が大切にしたいのは、お客さんがこの演目を観たときに、最終的に何を感じるのか。
登場人物それぞれの視点から、いろんなことを考えられる物語なので、「この人はこういう気持ちだから、こういう行動を取るんだ」とか、「この人はこうだから寂しいんだな。でも、相手は苦しいんだな」とか、3人それぞれの気持ちを考察しながら観ていただけたらと思っています。

そのためにも、僕自身が3人それぞれの感情をしっかり表現して、お客さんが登場人物の気持ちを想像したり、考えを巡らせたりできるような芝居をしたいです。とても素敵な脚本をいただいたので、その魅力を余すことなく伝えたい。

僕の芝居を受け取ったお客さんが、登場人物の気持ちになって考えたり、作品全体を見たときに自分はどんな気持ちになったのか、その感情を大事に持ち帰っていただきたいなと思っています。

撮影:遥南 碧/構成・取材・文:時枝 七奈

(後編の更新をお楽しみに!)

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菊池修司 俳優十周年記念 一人芝居 『神育 ーかむはぐー』

[あらすじ]

人を殺めることを、何よりも恐れる村があった。

戦争によって徴兵された村人たちは、戦地で犯した罪を背負ったまま故郷へ帰ってくる。

やがて彼らは、その罪と哀しみを引き受け、赦しを与えてくれる「神」をつくることにした。

選ばれたのは、ひとりの赤子。

名を与えず、抱きしめず、言葉も教えず。

暗い地下牢の奥で、人々はその子に恐怖や後悔、身勝手な願いを語り聞かせ続けた。

村には古くから、蛾は死者の魂を宿し、山の言葉を運ぶものだという伝承がある。

人を殺した兵士のまわりには、やがて無数の蛾が現れるという。

――その子は、人々の罪を食べて育った。

長い戦争の果て、焼け落ちた村を訪れたひとりの兵士が、地下牢で異様な少年を発見する。

「この子を、人間にしてやりたい」

兵士は少年に名前を与え、言葉を教え、世界を見せる。

美しいもの。醜いもの。善と悪。喜び。怒り。そして、愛。

何者でもなかった少年は、少しずつ「自分」になっていく。

けれど――

神を育てるのは、人間か。

人間を育てるのは、神か。

人間になろうとした神と、神に赦されようとした人間の物語。

『神育 ―かむはぐ―』

出演|菊池修司

脚本・演出・音楽|末原拓馬(おぼんろ)
美術|竹邊奈津子
音響|前田規寛(ロア)
照明|安永 瞬(Glowworks inc,)
衣裳|車 杏里
ヘアメイク|瀬戸口清香
舞台監督|鳥養友美
宣伝写真・美術|圓岡 淳
衣裳|車 杏里
現場制作|來生 藍
制作協力|KURAN
票券|カンフェティ
企画プロデュース|東郷摩耶
主催|Stova

[公演スケジュール]

シアター・アルファ東京
2026年11月11日(水)~11月15日(日)

 ▼アフターイベント
【カーテンコール撮影会】

■11月11日(水)19:00公演
■11月12日(木)19:00 公演

【アフタートーク】
■11月13日(金)15:00 公演  出演:菊池修司
■11月13日(金)19:00 公演  出演:菊池修司・末原拓馬(おぼんろ)

[公式サイト]

https://shuji-kikuchi.com/news/jNCiHvLJtaoPkiJZn9JW8X