2016年の初舞台から歩んできた10年間で、芝居への向き合い方が大きく変わったという菊池さん。
数々の役や共演者との出会いを重ねながら、表現の幅を広げています。
『ブルステ』の御影玲王との出会いで気づいた新たな芝居の感覚とは?そして俳優として憧れる平野良さんとのエピソードも。(後編)

――2016年の初舞台から10年。初舞台の頃の自分と今の自分で、「芝居をする」ということへの考え方はどう変わりましたか?

自分の面持ちはすごく変わったなと感じますね。最初の頃は、ただ、がむしゃらに頂いたセリフを読んで、そこに自分なりの感情を乗せてやっていました。

でも年々、このセリフは何のためにあるのか、相手を動かすためにセリフをどう言うかとか、前よりも思考の幅感が広がっていろんな分岐点が見えるようになりました。

最初の頃は1本の道しかなかったものが、今ではこういう演じ方や、ああいう演じ方もあるよな、じゃあこうしようとか選択肢がたくさん増えてきて、どの道を選ぶのかを楽しめるようになってきました。まさにお芝居の醍醐味だなと思います。
今回は一人芝居だからひとりで作り上げるけれど、普段はいろんな人と一緒に作っていくので、相手によって芝居の選択をする楽しさを感じます。

なので、初期とはもう、まるっきり180°変わったと言っても過言ではないぐらいです。
昔は思いもしなかったことを、今ではたくさん感じられるようになっているので、この10年間で少しは成長できたのかなと。

いろんな人と共演していく中で、いろんな価値観や表現方法があるので、実際に見て「あ、いいな」とか「これちょっとダメだな」とか、感じたものを吸収して自分のものにするということをやってきた10年間でした。
そんな経験が今の自分に生きているのだと思いますね。

――10年間の中で、芝居について一番悔しかった経験は何ですか? その経験が今の自分の芝居にどう残っていますか?

僕がコロナになり降板してしまった『ヴァニタスの手記』という作品は、今でもすごく印象的です。
というのも、自分が真ん中に立っていた作品が、自分がいない状態でもどんどん作品が進んでいく、場当たりまで参加していて、稽古も1か月ほどやっていたのに、僕がいなくても公演は進んでいくことにすごく苦しさを感じました。

コロナにかかってしまったタイミングだったこともあり、自分はいらない存在なんだとすごく気弱になってしまい、当時はすごく辛かったです。でも、その1年後に再演という形で同じ演目に立たせていただくことができたので、皆さんのおかげで苦しい気持ちは払拭できたと思っています。

この経験があるからこそ、舞台に立てることは決して当たり前じゃないんだと、改めて実感するようになりました。怪我や体調不良などで、立ちたくても舞台に立てなくなってしまうことは、僕自身はもちろん、誰にでも起こり得ることだと思います。

だからこそ、どの作品に入るときも、「舞台に立てることが当たり前じゃない」「観てくださる方がいることも当たり前じゃない」という気持ちを忘れずに、舞台と向き合っています。そういう意味では、コロナ禍での経験は、今の自分にとってすごく大きな気付きを与えてくれました。

――10年間、たくさんの役を演じられてきましたが、「役を演じているうちに、自分自身が変わった」と感じた役はありますか?

たくさんありますが、自分の分岐点としてひとつ挙げるならば、舞台『ブルーロック』の御影玲王です。

玲王はこれまで何度も演じてきているので、自分の一部になってきたなという感覚があります。自分自身と重なる瞬間が多くなってきて、演じるという概念がいい意味で少し崩れ始めてきたというか……。この、役と自分とが重なる感覚を、玲王だけでなく他の役でも感じることができれば、キャラクターがその場にいるリアル感をもっと表現できるのではないかと感じるくらいには、自分の中で分岐点となる役でしたね。

玲王と僕では、考え方も含めて、もともとは全然違うんです。でも、長く玲王と向き合っていくうちに、そのズレが少しずつなくなってきました。
玲王は自分ではないけど、どこか自分自身のように感じたり、玲王の気持ちが自然と分かるようになってきました。長年演じてきたことで、自分自身が役にどんどん寄り添っていったんだと思います。

例えば、相棒の凪誠士郎がこう考えているとき、「玲王だったらどう思うんだろう」と考えると、手に取るように分かるんです。それくらい、玲王のことは知っているつもりです。
だからこそ、これからは他の役でも、玲王と同じくらい深く、その役と向き合って、役自身と僕が重なるところまで高めていけたらいいなと思っています。

――菊池さんが俳優として活動し、出会いを重ねる中で、印象的だった方はいらっしゃいますか?エピソードとともに教えてください。

平野良さんですね。すごく好きな俳優さんです。
出会ってから、もう5、6年ほどになります。初めてお会いしたとき、僕はまだ20代半ばくらいだったんですけど、「こんなにお芝居が上手な人がいるんだ」と、すごく衝撃を受けました。

何でもさらっとこなしてしまうところもかっこいいですし、それでいて、プライベートではサウナが好きだったり、僕の話にも一生懸命耳を傾けてくださったりする。そういう人柄も含めて、すごく素敵な方だなと思いました。お芝居だけじゃなく、人としても「こんな俳優さんになりたい」と思わせてくれる存在です。

芝居に悩んで苦しんでいるときに、よくアドバイスを聞きに行っていたんですけど、そのときも基本的には肯定してくださるんです。でも、最後に「もう少しこうしたら、もっと良くなるよ」と、1、2個さらっと助言をくれます。
そんなふうに気持ちよくステップアップできるように伝えてくださるところが、すごく好きです。

僕のバースデーイベントにゲストで来てくださったときも、僕がキャンプが好きだということを知って、木製のかわいいコップを誕生日プレゼントにくれたんです。
ちゃんと僕の好みや、どう使うかまで考えて選んでくださっていて。そういうところにも、良さんの愛を感じて、すごく嬉しかったですね。

――これまで自分のお芝居やお仕事について、人から言われて一番嬉しかった言葉はなんでしょうか。

最近だと、舞台『龍が如く』で真島吾朗を演じた際にいろんな方から「ゲームから出てきた、そのままだった」と言われたことが、すごく嬉しかったです。
2.5次元舞台は、原作やキャラクターがあっての作品なので、やっぱりキャラクターそのままだったと言われることは、とても嬉しいです。『龍が如く』では、このために体づくりもしていたので、ゲームから出てきたみたいだった!
と言っていただけて、すごく報われました(笑)。役者として、キャラクターを演じる者として、そういう感想をいただけるのは感無量ですね。

――菊池さんが長年夢中になっているものがあれば教えてください。

人間観察です!僕、結構人とのコミュニケーションが好きで、会話をしたときに相手がどう感じているのかを観察するのがすごく好きなんです。「今、この人はこういうふうに思ったのかな?」って、つい分析しちゃいます。

いろんな人のことを観察して、「この人にはこういう絡み方をしてみよう」「この人にはこういうふうに接したら仲良くなれそうだな」と考えたりして、普段からそういうところで得たものを活かしています。
今の役者という仕事にもつながっていると思うんですけど、人の感情を知ることに対してはすごく貪欲ですし、これは長年ずっとハマっていることですね。

人間観察自体は、役者を始める前の学生時代から好きでした。相手に「今、どう思った?」って、結構聞いちゃうんですよ(笑)。「こう思ったよ」と教えてもらうと、「なるほど、こういうことをしたら、相手はこんなふうに感じるんだ」と分かる。
まさか、それが今の仕事に活きてくるとは思っていなかったんですけど、お芝居につながる部分もたくさんあって。そう考えると、なんだかすごく運命的だったなと思っています。

――今はラインストーンデコにハマっているとか。

ラインストーンは、完成したときのキラキラ感がすごくて、そこに達したときの満足感が高いんですよね。それが嬉しいです。僕は細かい作業が得意なわけではなくて、どちらかというと大雑把なほうなんですけど……。

興味を持ったことには、すごく没頭しちゃう癖があるんです。
でも、興味がなくなった途端に、やらなくなっちゃう(笑)。先ほどの飽き性の話にもつながるんですけど、いろんなものに興味を持つ一方で、冷めてしまうと本当にやらなくなります。

でも、昔からずっとパンケーキは好きですね。体作りをしていることもあって、食べない時期もあったんですけど……。
最近は、外のカフェに行くよりも、家で手軽に楽しめるものが好きです。ラインストーンも家でできるので、それで始めたんです。とても楽しいです!

撮影:遥南 碧/構成・取材・文:時枝 七奈

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菊池修司 俳優十周年記念 一人芝居 『神育 ーかむはぐー』

[あらすじ]

人を殺めることを、何よりも恐れる村があった。

戦争によって徴兵された村人たちは、戦地で犯した罪を背負ったまま故郷へ帰ってくる。

やがて彼らは、その罪と哀しみを引き受け、赦しを与えてくれる「神」をつくることにした。

選ばれたのは、ひとりの赤子。

名を与えず、抱きしめず、言葉も教えず。

暗い地下牢の奥で、人々はその子に恐怖や後悔、身勝手な願いを語り聞かせ続けた。

村には古くから、蛾は死者の魂を宿し、山の言葉を運ぶものだという伝承がある。

人を殺した兵士のまわりには、やがて無数の蛾が現れるという。

――その子は、人々の罪を食べて育った。

長い戦争の果て、焼け落ちた村を訪れたひとりの兵士が、地下牢で異様な少年を発見する。

「この子を、人間にしてやりたい」

兵士は少年に名前を与え、言葉を教え、世界を見せる。

美しいもの。醜いもの。善と悪。喜び。怒り。そして、愛。

何者でもなかった少年は、少しずつ「自分」になっていく。

けれど――

神を育てるのは、人間か。

人間を育てるのは、神か。

人間になろうとした神と、神に赦されようとした人間の物語。

『神育 ―かむはぐ―』

出演|菊池修司

脚本・演出・音楽|末原拓馬(おぼんろ)
美術|竹邊奈津子
音響|前田規寛(ロア)
照明|安永 瞬(Glowworks inc,)
衣裳|車 杏里
ヘアメイク|瀬戸口清香
舞台監督|鳥養友美
宣伝写真・美術|圓岡 淳
衣裳|車 杏里
現場制作|來生 藍
制作協力|KURAN
票券|カンフェティ
企画プロデュース|東郷摩耶
主催|Stova

[公演スケジュール]

シアター・アルファ東京
2026年11月11日(水)~11月15日(日)

 ▼アフターイベント
【カーテンコール撮影会】

■11月11日(水)19:00公演
■11月12日(木)19:00 公演

【アフタートーク】
■11月13日(金)15:00 公演  出演:菊池修司
■11月13日(金)19:00 公演  出演:菊池修司・末原拓馬(おぼんろ)

[公式サイト]

https://shuji-kikuchi.com/news/jNCiHvLJtaoPkiJZn9JW8X